二重ベータ崩壊実験/DCBA実験
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二重ベータ崩壊とは、大まかに言えば、(原子核が電子とニュートリノ(正確には反ニュートリノですが、以下では簡単のために「反」を省略します。)を放出して電荷が一単位大きい原子核に変わる)通常のベータ崩壊が同時に2個起こる現象と言えます。従って、電子とニュートリノの組が2組同時に放出され、原子核の電荷(原子番号)は2単位大きくなります。ベータ崩壊自身が、「素粒子の弱い相互作用」と呼ばれる相互作用で起こるので起こる確率は一般に小さいのですが、それが同時に2個起こると言うのですから、「起こり難い」の二乗で非常に起こりにくい、即ち稀にしか起こらない現象です。
所が、理論的には、二重ベータ崩壊の一つの様式として、ニュートリノを放出しない、即ち電子を2個放出するだけの二重ベータ崩壊が予想されています。これが起こる確率は、上で述べた2個のニュートリノを放出する二重ベータ崩壊より一層低い事が予想されており、実際未だ見付かったと言う確証は有りません!ここで言う、「二重ベータ崩壊実験」の究極の目的は、それを見付ける事です。
そのような現象がどんな意味を持つのでしょうか?実はその現象が起こる事は、
- ニュートリノと反ニュートリノとは同じ粒子であるという性質を持つ。
- 弱い相互作用が、これまで左巻ニュートリノにしか作用しないと考えられてきたのが、実は右巻にも作用する。
- 「質量がゼロ」で有ると信じられてきたニュートリノが、ゼロでない質量を持つ。
など、これまで綻びが無いと信じられてきた「素粒子の標準模型」の綻びを明確に示すものであるのです。
- 二重ベータ崩壊
- 崩壊様式:「原子核(Z,A)→原子核(Z+2,A)+電子_1+電子_2(+2個の電子ニュートリノ)」
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- 物理的意義: 2個の電子ニュートリノの放出を伴う場合と伴わない場合の二つのケースが予想される。
- 2個の電子ニュートリノの放出を伴う二重ベータ崩壊の検出/測定
- 通常のベータ崩壊の高次の効果、原子核の情報を知る上で有用である。
- 2個の電子ニュートリノの放出を伴わない二重ベータ崩壊の検出/測定
「素粒子の標準模型」では説明できない、「新しい物理が必要!」
- レプトン数の保存が破れる。
- ニュートリノと(ニュートリノの反粒子である)反ニュートリノは、同じ粒子である!
- ニュートリノの質量/右巻成分の存在を要求する。
- DCBA実験
- 二重ベータ崩壊の測定を目指す実験/検出器である。
- 実験/検出器の特徴
- 放出電子のエネルギーが比較的高く、比較的高い二重ベータ崩壊の確率が予想される、^{150}Ndを線源として用いている。
- ドリフトチェンバーと磁場の組合せで、電子のエネルギーと発生位置方向を測定する。
- 高性能FADC回路を用いた、チェンバーからの信号の時間と電荷量を同時に測定する。
- モジュール構造をしているので、段階的なスケールアップが比較的容易である。
- 現在、技術的な問題の洗い出しに使用されている、テスト用検出器です。
- DCBA実験のホームページへ行くにはここをクリックして下さい。
- NEMO実験グループとの共同研究の検討
This document was updated on Jul. 9, 2003.